中村勘三郎丈の番組を観た。
私は彼の何十年となく舞台を踏み続けた「足」が好きである。
勘九郎から勘三郎に襲名するこの数年間というもの、
彼の舞台はほとんど観続けてきたが、
このドキュメンタリーを通して彼の歌舞伎にかける情熱や想い、
そして役者として、人としての溢れる魅力を改めて感じた。
伝統を単なる伝統というだけで終わらせず、
若い世代にその魅力を伝えるべく心を砕く。
「どのようにしたら観客が喜ぶか」
彼の中心は常にそこにある。
ある時は浅草寺一体を芝居小屋にしてしまい仲見世の商店街も
巻き込み、中村座特製金貨で買い物を楽しませる。
またコクーン歌舞伎では本物のパトカーを舞台に登場させ
「あ!っ」と驚きの終幕を見せる・・
そして芝居小屋には彼自身がセレクトしたお薦め弁当等が並び、
初めから終わりまで、スミからスミまで観劇を楽しませてくれる
最高の心配りがそこにある。
芝居の内容は最ものこと、私はそういった彼の「もてなしの心」に
いつも感動と感謝で心震えてしまうのだ。
ドキュメントでは2年に及ぶ襲名公演の軌跡を追っていた。
その中でご子息・勘太郎さんの怪我、そして心の絆で深く結ばれた
門弟・源左衛門さんとの別れ等、
多くの辛さを乗り越えて迎えた京都での千秋楽までを伝えていた。
その口上での皆の涙。とても感動的であった。
末期がんでありながら最後まで勘三郎襲名公演の舞台に
立ちたいと願いながら旅立った源左衛門さんへの想い。
「中村一門は皆家族」「家族の支えがあってこその舞台」
その言葉にとても重みを感じた。そして涙が止まらなかった。
勘三郎丈から、そして中村一門から、今日もまたたくさんのことを
学ばせて頂いた。
「お客様の喜ぶ笑顔のために常に最善を尽くす心」
「舞台を作り上げる家族へ感謝する心」
伝統は親から子へ、そして孫へ・・・と確実に継承されていく。
その真摯な姿勢、想いとともに・・・
これからの歌舞伎界、そして中村一門の益々の活躍から
目が離せない。

